カメがウサギにドンブリ勝負

会議通訳者・長井鞠子さん①

かな~~~り前に録画してあった『プロフェッショナル 仕事の流儀』。
同時通訳者の長井鞠子さんの回が印象深かったので
文章に起こしてみました。

調べてみたところ、2014年3月3日放送だったようで。
プロフェッショナルのホームページのコチラに簡単な番組内容が
書かれていました。

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滝川クリステルさん
「通訳がまた迫力があるんですよ。
 こう 気持ちを代弁するかのような」

通訳ブースの中の長井さん
「子どもたちは2020年の東京オリンピックに参加して金メダルを
 とりたいと言っているんです。
 これですばらしい日本が作り上げられていくことでしょう」


長井鞠子。
熾烈な国際会議を飛び回る通訳のプロ中のプロ。

研ぎ澄まされた集中力と瞬発力が求められる同時通訳。

全身全霊を捧げて、話し手の想いを伝えていく。

「真剣勝負です。格闘技です」


テロップ: file225 職業 会議通訳者

年間200もの国際会議を任される長井。
世界中の要人から熱い支持を集める。

テロップ: マレーシア国際通商産業大臣
「発音も用語もすべて完璧ですよ」

テロップ: アメリカ元副大統領
「彼女は日本一の通訳です。あるいは世界一かもしれません」

テロップ: うちひしがれた40代

仕事も家庭も失った40代。
支えたのは母の言葉。
「母の言葉がなかったら どういうふうになっていたかは想像もつかないですね」


テロップ: 「ふるさと」のために

震災から3年。
被災地に募る思い。
福島から世界に発信する国際会議。
届けたい言葉があった。


テロップ: featuring today
言葉を超えて、人をつなぐ
      会議通訳者 長井鞠子


テロップ: 東京・品川

この日、会議通訳者・長井鞠子は朝6時から仕事の準備に追われていた。

スタッフ「おはようございます」

「おはようございます。お早いご到着で」(と言いつつ、自宅へ通す長井さん)

「3時間半しか寝てないんですよね」

マレーシアの首相が参加する経済協力会議で同時通訳を行うことに
なっていた。

「food zoneなんて書いてあるので食糧地帯って訳そうかな」
(会議の資料には、書き込みが多数)

(すると、テレビニュースの画面を見て)「なんだあれは」

外交の最前線で仕事をする長井。
政治や経済の最新ニュースを常に頭に叩き込んでおく。

「何が今ニュースになってるかというのは やっぱり ちゃんととらえとかないと
 いけないので。
 えっ そんな話でてた?ていうのは、私たちの世界ではありえないことなので。
 しかも日本だけじゃなくて外国のことも知らなきゃいけないので」


(コートを着て、出かける準備万端の長井さん。窓のカーテンを開けながら)
「あ、少し富士山見えてきました」

出勤直前、長井は何時も願掛けをする。

「ピンクに染まってる富士山が見えたりすると」
(パンパンと軽く手をたたき、富士山に向かってお辞儀)
「今日もいいことありますように。富士山信仰」
(ふふ、と軽く笑う長井さん)

「それでは行きませう」
(資料がパンパンに入ってそうな、小ぶりなキャリーバックを持って出発)


テロップ: 東京 日比谷

この日の仕事場は都内にあるホテルの会議場。
(帝国ホテルだったようです)

「おはようございます。通訳です」
(そういって、会議場前の受付を通過していく長井さん。
 通訳ブースへ向かう通路を歩いていきます)

会議は8時間半。
夕食会も含めれば12時間に及ぶ長丁場だ。
 
「おはようございます」
(通訳ブースへ入っていく長井さん)

長井は会議場を一望できる、この通訳ブースで同時通訳を行う。

「私のナジブ(マレーシア首相)が終わりそうになったら安達さんが下がって
 くださって調印式は全部あなたが」

(長井さんの他に、2名の女性がブース内にいるのが映ります)

同時通訳は通常、2・3人のチームを組み交代しながら行う。
訓練されたプロでも集中力を最高度に持続できるのは20分が限度。
過酷な仕事だ。

 
マレーシアのナジブ首相が閣僚を引き連れてやってきた。

日本企業の担当者たちに首相自らマレーシアへの投資を呼びかける。
(日本マレーシア経済協議会 第32回合同会議の横断幕が。
 13 December 2013 in Tokyoの文字も映りました)

長井の当時通訳が始まった。

(英語から日本語へ通訳する長井さん)

日本語から英語への通訳も行う。

同時通訳を行うためにはネイティブ並みの英語力が不可欠だ。
だが、それだけではこの仕事は務まらない。
求められるのは発言を瞬時に理解し自然な翻訳を時間差なく行うこと。
この技術において、長井は並ぶものがないと言われる。

猛烈なスピードで訳しながらも、同時通訳が陥りがちな たどたどしさはない。

長井は通訳の間、発言者を睨みつけるように見据える。
同時通訳の仕事を、こう例える。

テロップ: 同時通訳=”格闘技”

「真剣勝負みたいなところがありますよね。
 聞いて 理解して 分析して 翻訳して 発声する。
 そういうプロセスが1~2秒の間におこなわれるということだと思います」

「その時その場で出たものにスパッと答えなきゃいけないっていう意味では
 格闘技だっていうことにつながるわけです」

「その言ってることはちゃんと受け止めて、あたしがちゃんと聞き手に渡して
 あげるわよ。だから どんといらっしゃいと思っているだけです」

会議終盤。
難しい発言者が壇上に上がった。

テロップ: マレーシア中小企業公社 CEO

話すスピードが速く、しかも独特なアクセントがある。
熱く訴える(壇上の)女性。

その熱意が乗り移ったように長井は額に汗を浮かべ体を動かしながら
通訳していく。
(額の汗を拭く長井さん)
(身振り手振りをしながら通訳する姿が)

「ご清聴に感謝します」
(最後の言葉を訳すと、机の上にうつぶせになるような素振りを見せる長井さん。
 資料をパタパタして、ご自身に風を送っています)

20分以上に及んだプレゼンを長井は一人で訳しきった。

「負けないぞって思って やってましたから。
 彼女はものすごいパワフルだったから
 彼女のパワフルさに これでつぶされないぞっていう気持ちでやってると
 自分も乗らざるを得ないですよ。疲れました だから。へろへろです」


テロップ: プロフェッショナルのこだわり

70歳にしてなおトップ通訳者として活躍を続ける長井鞠子さん。
サミットから軍縮会議まで40年にわたって日本の外交を陰で支えてきた。
(画面にはカーター元大統領、森元首相、クリントン元大統領などなどが
 映し出されます)

その腕を頼って歴代首相や政府要人が長井さんを通訳に指名する。

(画面に石原慎太郎衆議院議員と、長井さんの写真)
「僕は人に紹介するとき She is my interpreter(僕の通訳です)って言わずに
 同志ですって紹介するの」と石原氏。

「横田基地の問題でね国防総省のローレスっていう ものすごくタフなやつなんだよ」
(画面には元アメリカ国防副次官ローレス氏の映像)
「僕らは2時間ねばって話ししたの。その間彼女もね僕が卓(たく)を叩くと彼女も
 卓叩いて(通訳)やるんですよ」

「したら終わって帰るときにねローレスがね、いやぁ今までいろんな人間と交渉したけどね
 石原さんもタフだけど、あなたの通訳もタフだなってね。
 下を巻いたのが非常に印象的でしたね。長井さんにはかなわないなぁ」

長井さんの通訳が相手の心に突き刺さっていくのには、ある秘密がある。

テロップ: 英語力×日本語力

長井さんの日本語は、とにかく分かりやすい。
耳なじみのいい表現を巧みに取り入れながら、澱みなく通訳する。


日本語の力を、より研ぎ澄ますために取り組んでいることがある。

テロップ: 銀閣 慈照寺

なんと和歌の稽古。
月に一回、京都・銀閣寺まで通い和歌を詠んでいる。
(独特な節回しで、生徒さんたちとおぼしき方々と和歌を詠む長井さん)

(自作の和歌を添削してもらっている長井さんの姿)
和歌を作ることで日本語らしい柔らかい表現を身に付けたいのだという。

「もっと極めるためには もっと英語の勉強をした方がいいかもしれないけれども
 私にとっては一番”やまとことば”というか日本語の中でも漢語ではない言葉を
 もうちょっと極めたいなという思いが強いんですよね」

「例えば”増える”っていう言い方をするときに増加するとか 増大するとか
 いうんじゃなくて、ふえるとかおおきくなるとか、そういう言い方をした方が
 本来は伝わりやすいはずなんですよね」

「もうちょっとわかりよく すんなりと耳に入り、すとんと心に落ちるような
 そういう訳ってないものかなっと常に私は探したい。
 改善しようがないなんてそんなのないですよ。
 言葉っていうのは際限ないです」



テロップ: 1月15日

1月半ば。
長井に難しい仕事の依頼が舞い込んでいた。
(自宅のテーブルで資料を広げる長井さん)

「飛鳥・藤原 その遺跡がありますよね。それを海外の専門家をお呼びして
 世界遺産に登録することに一歩でも近づきましょうという そういう仕事です」

(画面には世界遺産「飛鳥・藤原」登録推進協議会。
 海外専門家招聘 世界遺産専門家会議と書かれた資料が)

古代日本の中心地、奈良 飛鳥・藤原。
その遺跡の価値を、審査にかかわる国際機関のスタッフに説明する専門性の
高い仕事だ。

「期待には応えなければいけませんね」


テロップ: 奈良 飛鳥 1月18日

「見てまいりましょう」
(専門家たちを遺跡に案内する長井さんの姿)

現地での視察が始まった。

今回訪れたのはカナダ、韓国、そして中国から来た専門家たち。

テロップ: 石舞台古墳

日本史の専門ではない彼らに遺跡の価値を説明するのは簡単ではない。


テロップ: 伝飛鳥板蓋宮跡

1400年前、飛鳥時代を今に伝える遺跡群。
独特なニュアンスを正確に伝えられるか。


(夜。ホテルの室内)
「いただいた資料全部読んで」

同時通訳に臨む前、長井には必ず行う大切な準備がある。
会議で出そうな言葉をノートに書きだす単語帳作りだ。

「手書きしている人なんてもう天然記念物だと思います。
 だけど書いてるうちに、ちょっと覚えるような気がするんですよね。
 効率の悪い話ですけどね」


書き出すのは、その会議で使われる専門用語ばかりではない。

「Priceless 貴重な・かけがえのない」
(声に出す長井さん)

鍵になりそうな言葉は、ごく基本的な単語でも書き出し最もふさわしい訳語を
見つけていく。
ここに、長井のこだわる信念がある。

テロップ: 準備と努力は、裏切らない

「通訳の仕事は同じことの繰り返しは一度たりともないわけですよ。
 そのときに発言される人は毎回違いますし話す内容も違うし
 もちろん時間は24時間ですから限りはありますけれど できる限りの準備はして
 臨みたいですよ。
 自分はもっと準備できたかもしれないのに80%だからいいやって思うのは
 私は嫌ですね」


テロップ: 1月20日

会議当日。
(奈良県文化振興課の方と挨拶をする長井さん)

「今回のチーフの通訳をいたします長井です。
 よろしくお願いいたします」

(「頼りにしております」と担当者の方から言われる長井さん)


会議の冒頭、専門家からは厳しい意見が伝えられた。
遺跡の価値は認めるが、人類の共通遺産にする意味があるか疑問だという。

日本側の研究者が反論を述べ始めた。
長井は専門用語を的確に翻訳していく。

4時間が経過した頃、両者の溝が埋まり始めた。

会議は専門家たちから前向きなアドバイスをもらって幕を閉じた。


韓国の専門家「世界遺産登録へさらに近づく話し合いができたと思いますよ」

カナダの専門家「日本にとって歴史的にとても重要なところだとはっきりと
理解できましたし、まだ課題はありますが非常に面白いプレゼンだったと思います」


(会議に出席していた日本人の男性から声を掛けられる長井さん)
「いつの間にか同時通訳していただいてるって事を忘れて。
 私どもも かなかついていけないこともあって大変だったと思いますが
 ありがとうございました」

「こちらこそありがとうございました」(お礼を言う長井さん)


テロップ: 年に1度の楽しみ。
      アメリカに住む娘の雪子さんと孫のアキラくんと過ごすひととき


(自宅での長井さん)
「2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致活動で使った単語帳です」

日本の国際交渉を裏方として支え続けてきた長井さん。

「今までの単語帳は全部ここに入ってます」
(四段に仕切られた棚の中には、ノートなどがビッシリ!)

ずっと作り続けている手書きの単語帳。

「1976年の9月ですよ」

40年分、捨てずに保管してある。

「みんな笑ってますよ。長井の単語帳は全部手書きだってみんな笑ってますよ。
 でもいいの。私はどこに何書いてるかわかってるから」


大ベテランになった今も、地道な準備を欠かさない。
その姿勢の陰には、今なお消えない苦い記憶がある。


テロップ: 通訳にささげた人生


長井さんは昭和18年。東北・仙台に生まれた。
三姉妹の末っ子で、物おじしない子供だった。
終戦直後、アメリカ軍の兵士に抱っこされたときも怖気づく周囲をよそに
平気な顔をしていた。

いつも活発な長井さんに、通訳になるきっかけを与えてくれたのは
母の三枝子さんだった。

大正生まれでは珍しく英語が達者。
GHQの通訳もつとめるほどだった。

母の姿に憧れて、高校生の長井さんはアメリカに留学。
周囲は「女の子なのに無茶だ」と反対したが、長井さんは平気だった。

帰国後、その英語力を生かしてアルバイトをつとめた。

テロップ: 1964年 東京オリンピック

東京オリンピック、水泳競技の選手紹介。
(当時の映像と共に、長井さんが選手を紹介する声が流れました)

そして長井さんは大学卒業と同時に通訳の会社に就職した。
初めは一生の仕事とまでは思っていなかった。
でも通訳を終えてブースを出ると、容赦ない陰口が聞こえてきた。

「今日の通訳、さっぱり分からない」
持ち前の負けん気に火が付いた。

徹底的に資料を読み込み、単語帳を作って妥協なく仕事に臨むと決めた。

間もなく結婚し、子供の世話にも追われたが睡眠時間を削っても絶対準備は
手を抜かなかった。

地道な努力を続けるうちに、長井さんの評価は少しず上がっていった。

そして35歳の時。

テロップ: 1978年 ボン サミット(先進国首脳会議)

長井さんは通訳の最高峰・サミット 先進国首脳会議の仕事に抜擢された。
以後、長井さんは歴代首相の通訳を担当することになる。

しかし、何もかも順調だと思った矢先のことだった。

40代に入って間もなく、人生の試練に直面した。

2人の子供をもうけていた夫との離婚。

仕事も家庭も子供の世話も、すべてを完璧にこなしたいと願ってきた。
なぜ、それを叶えられなかったのだろう。

持ち前の負けん気が影をひそめ、思い悩む日々。
うじうじする自分を、どうにもできなかった。

「悔しいような 悲しいような さびしいような
それで世の中に中年の夫婦が並んで歩いているのを見るだけで
もう涙出ましたし」


そんなある日、事件が起きた。

あるシンポジウムの通訳に臨む前、20年欠かさずに続けてきた単語帳作りを
初めて怠った。

それは致命的な結果を招いた。

発言者は早口で、専門用語を連発。
訳が全く浮かばず、しどろもどろになった。
全てが終わった後、長井さんは言われた。
「もう、あなたはこなくていい」


ただただ、情けなかった。

「自分はもう価値がないんじゃないかと。
 自分はこういう状態の自分っていうのは、この世に存在しちゃいけないんじゃないか
 みたいにまで思うわけですよ。意味がないんじゃないかと」


失意の中で迎えた誕生日。
一通の手紙が送られてきた。

差出人は、ずっと憧れだった母の三枝子さん。

手紙には、水遊びをする少女が写った新聞の切り抜きが添えられていた。

テロップ: 1996年4月30日 毎日新聞

あなたの子供時代を思わせる写真が載っていたので送ります。
1人真っ先に濡れるのも構わず一心に突き進んでいる姿。
まさに鞠子そのもの。頑張れ マリコ!!

 
自分を誰より知っている母の言葉。

くじけてたまるか、と思った。


「やっぱりエンジェルっていうのかなぁ」
(手書きの単語帳作成中の長井さん)

以来、長井さんは次の仕事への地道な準備を欠かしたことがない。

一つ、また一つ。
70歳の今も、目の前の仕事に全力で挑んでいる。


テロップ: 世界のV.I.Pに愛される長井

アメリカ元副大統領 ダン・クエールさん

「長井さんは相手の言った言葉の本当のニュアンスや人柄まで伝えてくれる。
 だから会議が終わってから、この人は信用できる人かどうか彼女に必ず
 聞くことにしています」


長くなりましたので、②へ続きます
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by yui_usakame | 2015-10-12 10:29 | てれび

のんびり、のびのび、書きたいときは沢山書く。書かないときは、何か月も書かない。そんな、ぐーたらブログです。
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